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愛妻物語

愛妻物語

新藤兼人監督の半自伝的な作品です。死別した最初の妻、久慈孝子さんとの思い出を「私小説」ならぬ「私映画」として描ききっています。新藤兼人が自ら書き卸したシナリオによる監督第一回作品で、撮影は「上州鴉」の竹村康和が担当しています。主演は「限りなき情熱」の宇野重吉と「お遊さま」の乙羽信子、それに英百合子、滝沢修、清水将夫、菅井一郎、香川良介、殿山泰司などの助演陣です。日本で第一の脚本家にして、40本を超える映画を監督した新藤監督の、これが監督デビュー作です。デビュー作にこそ、その監督の全てが隠されているとしたら、まさにそれは、対象に愚直に、そして一直線に迫っていくこの姿勢でしょう。個々の映画が、面白いか面白くないかは別として、この姿勢には圧倒されますし、これこそ新藤監督の真髄です。そして、映画の同志として、やがては伴侶として、一生を新藤監督に捧げることになる乙羽信子は、まさに新藤監督の「愛妻」でした。その点で、この映画は久慈孝子さんの映画でもあり、乙羽信子の映画でもあったのでしょう。

カタルシスを味わう

『愛妻物語』概要

新藤兼人監督は盟友・吉村公三郎と組んで「源氏物語」「森の石松」などの傑作を執筆していました。その彼にしても、この監督作を実現するには、後に、彼の創作活動の母胎となる近代映画協会の設立など、多くの困難を乗り越えなければなりませんでした。物語は、かなり彼の自伝的生活の強いものであり、自らの修業時代の生活を描いています。正直なところ彼は、自分のことを語るのだから何とかなるだろうという気持ちから、監督という試みに挑戦したそうです。その結果は、さわやかな感動の佳編が誕生しました。この成功によって、彼はさらに、監督に対する意欲を奮いたたせることになったのです。主人公の沼崎を宇野重吉が、そして彼に献身的な愛情を捧げる妻を乙羽信子が好演しています。乙羽信子はこの後、新藤監督のほとんど総ての作品に出演し、演技派としての道を歩むことになりました。また、劇中で描かれる坂口監督は、新藤自身が師と仰ぎ生涯に大きな影響を受けた溝口健二その人です。

あらすじ

沼崎敬太がまだ東京のある撮影所の脚本研究生であったとき、下宿の娘孝子と相愛の間柄になりました。しかし、孝子の父は映画に理解なく二人の結婚に反対して沼崎を家から追立てたました。孝子は父に叛いて敬太の許へ走り、二人の結婚生活が始まりました。その頃日本は軍閥政治の重圧の下にあり、映画製作会社の合併問題など起り、人員整理の嵐が当然敬太にも波及しそうになったので、敬太は孝子と計って京都の撮影所企画部長増田氏を頼って行きました。増田氏の紹介で敬太は坂口監督の仕事をもらい、孝子の内職などで糊口をしのぎながら、一作を書きあげましたが、坂口監督からは、最初から勉強のしなおしをするんだねといって脚本を返されます。自信を失いそうになった敬太を励ました孝子は、再び苦しい内職に夜を日をつぎました。敬太も死もの狂いの勉強をはじめます。そうして書き上げた脚本はようやく坂口監督の気に入ったのでしたが、孝子は長い間の無理がたたって急性結核で倒れてしまします。敬太が坂口監督の命で第二稿、第三稿と書き直しをし、ついに明日決定稿を渡すという日、孝子は「一生シナリオを書いて」という遺言を残して静かに死の眠りについたのです。

モノローグ

波打ち際のカットにかぶさるように宇野重吉のモノローグがかぶります。とっても長いモノローグで「みなさん、私は映画の脚本を書いているシナリオライターです。私は映画の脚本を書き始めてから、もう10年余りになりますが、才能も貧しくてまだこれという作品を書いておりません。しかし、私は映画を愛しております。いつかはいいシナリオを書きたいと努力しています。でも一生そう思いながら死んでしまうかもしれません。それでも私は満足です。この物語の私の妻がそう教えてくれたのです。私は苦しいことに出会うたびに、妻の言葉を思うて勇気を奮い起こしてまいりました。これからもずっとそうだろうと思います。いつも映画を観てくれる皆さんに、シナリオライターの物語もたまには興味があっていいのではないかと思います。ではみなさん、平凡なシナリオライターの小さな物語を聞いてください」もう、このモノローグで、監督の言いたいことは全て言い尽くされているような気がします。

『愛妻物語』関連ドラマ

『世界一の「愛妻物語」~乙羽信子と新藤兼人』  

  • 2006年・NTV
  • 監督:長沼 誠
  • 原案:乙羽信子・江森陽弘「乙羽信子どろんこ半生記」・新藤兼人「ながい二人の道、乙羽信子とともに 
  • 出演:片平なぎさ・寺脇康文・北村総一朗・鶴見辰吾・小野武彦・田中律子・原田大二郎・ 左時枝・東根作寿英・丸山和也 

物語:1950年、映画界に転進した元宝塚のトップスターの乙羽信子(片平)は、舞台との違いや個人的な問題でどん底状態にあった。そんな中で、彼女は自分にアプローチしてきた監督兼シナリオ作家・新藤兼人(寺脇)の台本に感激し傾倒する。当時、新藤は独立プロダクション『近代映画協会』を立ち上げたばかりだった。乙羽は新藤を尊敬し、これからの女優人生を賭けて付いて行こうと決意する。

『女優時代』   

  • 1990年頃・読売テレビ系木曜ゴールデンドラマ枠) 
  • 原作:新藤兼人
  • 出演:斉藤由貴

『女の一代記シリーズ』  

  • 2005年・フジテレビ 
  • 出演:林清羅

『乙羽信子 どろんこ半生記』の映像化  

  • 2006年・日本テレビドラマ・コンプレックス
  • 出演:片平なぎさ

キャスト

  • 沼崎敬太:宇野重吉
  • 石川孝子:乙羽信子

    石川浩造:香川良介

    石川弓江:英百合子

    坂口監督:滝沢修

    増田:清水将夫

    所長:菅井一郎

    製作部長:原聖四郎

  • 太田作之助:伊達三郎
  • 安さん:殿山泰司
  • 内儀さん:大美輝子

  • シナリオ・ライター:堀北幸夫
  • シナリオ・ライター:菊野昌代士
  • 芸妓:柳恵美子

スタッフ

  • 監督:新藤兼人
  • 脚本:新藤兼人

  • 撮影:竹村康和

  • 美術:水谷浩

  • 音楽:木下忠司

乙羽 信子

新藤兼人監督作品に多数出演している乙羽 信子の出演映画をご紹介します。

出演映画

  • 1950年 處女蜂
  • 1951年 宮城広場
  • 1951年 お遊さま
  • 1951年 愛妻物語
  • 1952年 浅草紅団
  • 1952年 原爆の子
  • 1952年 安宅家の人々
  • 1953年 夜明け前
  • 1954年 どぶ
  • 1955年 美女と怪龍
  • 1956年 銀心中
  • 1956年 女優
  • 1956年 太夫さんより 女体は哀しく
  • 1957年 悲しみは女だけに
  • 1958年 柳生武芸帳 双龍秘剣
  • 1959年 第五福竜丸
  • 1959年 日本誕生
  • 1960年 秋立ちぬ
  • 1960年 珍品堂主人
  • 1960年 裸の島
  • 1961年 猟銃
  • 1961年 世界大戦争
  • 1961年 愛情の系譜
  • 1963年 台所太平記
  • 1963年 母
  • 1964年 おかあさんのばか
  • 1964年 香華
  • 1964年 鬼婆
  • 1966年 暴れ豪右衛門
  • 1967年 父と子 続・名もなく貧しく美しく
  • 1968年 藪の中の黒猫
  • 1969年 赤毛
  • 1969年 触角
  • 1971年 裸の十九才
  • 1973年 恍惚の人
  • 1973年 心
  • 1975年 球形の荒野
  • 1978年 事件
  • 1979年 絞殺
  • 1979年 配達されない三通の手紙
  • 1980年 思えば遠くへ来たもんだ
  • 1981年 北斎漫画
  • 1984年 天国にいちばん近い島
  • 1985年 夜叉
  • 1986年 落葉樹
  • 1986年 ブラックボード
  • 1987年 二十四の瞳
  • 1992年 東綺譚
  • 1992年 釣りバカ日誌5
  • 1995年 午後の遺言状
  • 2000年 三文役者
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