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午後の遺言状

午後の遺言状

『午後の遺言状』は、別荘に避暑にやって来た大女優が出会う出来事の数々を通して、生きる意味を問うドラマです。監督・脚色は「墨東綺譚 (1992)」の新藤兼人。撮影は「墨東綺譚 (1992)」の三宅義行。主演は杉村春子と、1994年12月22日に逝去した乙羽信子。芸術文化振興基金助成作品。1995年度キネマ旬報ベストテン第1位ほか、監督賞(新藤)、脚本賞(新藤)、主演女優賞(杉村)、助演女優賞(乙羽)の4部門を受賞しました。第38回ブルーリボン賞および第19回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品。日本を代表する名女優の杉村春子の最後の映画主演作、新藤の妻・乙羽信子の遺作、1950年に引退していた朝霧鏡子の45年ぶりの出演作です。

カタルシスを味わう

あらすじ

夏の蓼科高原に、女優・森本蓉子(杉村春子)が避暑にやって来た。彼女を迎えるのは30年もの間、その別荘を管理している農婦の豊子(乙羽信子)。言葉は乱暴だがきちんと仕事をこなす豊子に、庭師の六兵衛が死んだことを知らされた蓉子は、六兵衛が棺桶に乗せたのと同じ石を川原から拾って棚に飾る。豊子には22歳の娘・あけみ(瀬尾智美)がいた。子供のいない未亡人の蓉子は、あけみを自分の子供のように可愛がっている。翌日、別荘に古い友人の牛国夫妻がやって来る。しかし、夫人の登美江(朝霧鏡子)は痴呆症にかかっており、様子がおかしい。過去と現実が混濁している登美江を元に戻したい一心で、夫の藤八郎(観世栄夫)は蓉子に会わせたのだが、一瞬チェーホフの『かもめ』の一節を蓉子と空で言えたかと思うと、元の状態にすぐに戻ってしまう。と、そこへピストルを持った脱獄囚が別荘に押し入って来た。恐怖におののく蓉子たち。だが、男がひるんだ隙に警戒中の警官が難を救った。そして、蓉子たちはこの逮捕劇に協力したとのことで、警察から感謝状と金一封を受け取る。ご機嫌の蓉子たちは、その足で近くのホテルで祝杯を上げた。翌日、牛国夫妻は故郷へ行くと言って別荘を後にする。やっと落ち着ける蓉子だったが、近く嫁入りするあけみは実は豊子と蓉子の夫・三郎(津川雅彦)との子供だったという豊子の爆弾発言に、またもや心中を掻き乱されることになる。動揺した蓉子は不倫だと言って豊子をなじるが、あけみには真実を隠したままにしておくことになった。そして、結婚式を前にこの地方の風習である足入れの儀式が執り行われた。生と性をうたうその儀式に次第に酔いしれていく蓉子は、早く帰郷して舞台に立ちたいと思うようになった。ところが、そこへ一人の女性ルポライター・矢沢(倍賞美津子)が、牛国夫妻の訃報を持って現れた。驚いた蓉子は豊子を伴い、矢沢に牛国夫妻が辿った道を案内してもらう。二人が入水自殺を図った浜辺で、蓉子は残された人生を充実したものにすると、手を合わせる。別荘に戻った蓉子は舞台用の写真の撮影を済ませると、東京へ帰っていく。豊子は蓉子が死んだ時に棺桶の釘を打つために、以前拾ってきた石を預かるが、いつまでも死なないで強く生きて欲しいという願いを込めて、それを川原に捨ててしまうのだった

受賞

  • 第69回キネマ旬報ベスト・テン 委員選出日本映画部門第1位/監督賞/主演女優賞(杉村春子)/助演女優賞(乙羽信子)
  • 第50回毎日映画コンクール 日本映画大賞/監督賞/女優主演賞(杉村春子)/特別賞(乙羽信子)
  • 第8回日刊スポーツ映画大賞 監督賞/主演女優賞(杉村春子)
  • 第19回日本アカデミー賞 最優秀作品賞/最優秀監督賞/最優秀助演女優賞(乙羽信子)/最優秀脚本賞(新藤兼人)/優秀編集賞 その他
  • 第38回ブルーリボン賞 作品賞
  • 第20回報知映画賞 最優秀作品賞

キャスト

  • 森本蓉子:杉村春子
  • 柳川豊子:乙羽信子
  • 牛国登美江:朝霧鏡子
  • 牛国藤八郎:観世栄夫
  • あけみ:瀬尾智美
  • 森本三郎:津川雅彦
  • 矢沢尚子:倍賞美津子
  • 手塚警部補:永島敏行
  • 両岡大五郎:松重豊
  • 脱獄囚:木場勝己
  • 大前田署長:上田耕一
  • 警官:加地健太郎
  • 清川浩二:内野聖陽
  • 民宿の主人:馬場当
  • ホテルのフロント:遠藤守哉
  • ホテルの支配人:三木敏彦
  • ホテルのルーム係:三浦純子
  • 天狗:麿赤児

スタッフ

  • 監督/原作/脚本:新藤兼人
  • 製作者:新藤次郎
  • プロデュース:溝上潔/井端康夫
  • 撮影:三宅義行
  • 照明:山下博
  • 音楽:林光
  • 美術:重田重盛
  • 編集:渡辺行夫

杉村 春子(1906年1月6日 - 1997年4月4日)

杉村 春子は、広島県広島市出身の新劇女優。本名は石山 春子。旧姓は中野で、杉村は芸名です。築地小劇場より始まり文学座に至る日本の演劇界の屋台骨を支え続け、演劇史・文化史に大きな足跡を残した文字通り、日本を代表する大女優です。称号は東京都名誉都民。戦後、『女の一生』の再演は文学座が立ち直るきっかけとなりました。経営の苦労を身に染みて知る杉村はお客を大切にしました。このことは新劇の商業演劇進出の走りといわれています。

活躍

『女の一生』のほか、『華岡青洲の妻』、『欲望という名の電車』、『ふるあめりかに袖はぬらさじ』など創作劇、翻訳劇のいずれの分野でも、リアルな女性像を描き出しました。舞台のみならず、映画・テレビでも幅広く活躍しました。映画初出演は築地小劇場時代の1927年に小山内薫が監督をした『黎明』か1932年、初代水谷八重子と共演した『浪子』か、1937年、『浅草の灯』か、文献によって記述が異なります。その後も小津安二郎、黒澤明、成瀬巳喜男、豊田四郎、木下惠介といった名監督たちから、既存の映画俳優には無い自然でリアルな演技力を高く評価され、『東京物語』を初め日本映画史を彩る名作群約100本に出演、映画史にもその名を刻みました。小津組でたった一人、読み合わせへの不参と"縫い"(かけ持ち)を許された俳優でした。森雅之と共に最も映画に貢献した新劇俳優でもあります。

出演映画

  • 1937年 浅草の灯島 津保次郎
  • 1940年 奥村五百子 豊田四郎
  • 1940年 小島の春 豊田四郎
  • 1941年 次郎物語 島耕二
  • 1946年 大曾根家の朝 木下惠介
  • 1946年 わが青春に悔なし 黒澤明
  • 1947年 四つの恋の物語 豊田四郎
  • 1947年 三本指の男 松田定次
  • 1947年 手をつなぐ子等 稲垣浩
  • 1949年 晩春 小津安二郎
  • 1950年 また逢う日まで 今井正
  • 1951年 麦秋 小津安二郎
  • 1951年 めし 成瀬巳喜男
  • 1953年 東京物語 小津安次郎
  • 1953年 にごりえ 今井正
  • 1954年 晩菊成 瀬巳喜男
  • 1955年 楊貴妃 溝口健二
  • 1955年 心に花の咲く日まで 佐分利信
  • 1955年 野菊の如き君なりき 木下惠介
  • 1955年 警察日記 久松静児
  • 1956年 流れる 成瀬巳喜男
  • 1957年 東京暮色 小津安二郎
  • 1957年 満員電車 市川崑
  • 1959年 日本誕生 稲垣浩
  • 1959年 お早よう 小津安二郎
  • 1959年 浮草 小津安二郎
  • 1960年 足にさわった女 増村保造
  • 1961年 釈迦 三隅研次
  • 1961年 反逆児 伊藤大輔
  • 1961年 沓掛時次郎池 広一夫
  • 1961年 小早川家の秋 小津安二郎
  • 1962年 女の座成 瀬巳喜男
  • 1962年 秋刀魚の味 小津安二郎
  • 1963年 母 新藤兼人
  • 1963年 海軍 新藤兼人
  • 1964年 香華 木下惠介
  • 1964年 怪談 小林正樹
  • 1965年 侍 岡本喜八
  • 1965年 赤ひげ 黒澤明
  • 1973年 化石の森 篠田正浩
  • 1975年 化石 小林正樹
  • 1988年 さくら隊散る 新藤兼人
  • 1992年 ?東綺譚 新藤兼人
  • 995年 午後の遺言状 新藤兼人
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